大人になったら誰かに物事を教えるということは避けては通れない道です。そんな中でも「子ども」に物事を教えることは非常に大変です。
子どもは大人と違い、知識も経験も少なく、自制心も弱いです。普通に勉強を教えても上手くいかないことのほうが多いでしょう。
子どもに上手く勉強を教えることは不可能なのでしょうか。
今回紹介するのは、Daniel T. Willingham 著【教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則】です。
【教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則】は、脳科学や認知科学の観点から、子どもたちに勉強を教えるということを詳しく解説してくれています。
内容をもとに授業を構成して練習していけば、子どもたちに物事を教えるのは上手くなってくるはずですし、自分が勉強するときにも役に立つ知見がたくさんあります。
この記事では【教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則】を要約し、気になったところを解説していきます。
適度な難易度の課題を用意する
僕も子どもがいますし、学生に教える立場にいるのでわかりますが、子どもは大人のように考えることはできません。こちらからすれば「なんでこんなこともわからないの」と思ってしまうのですが、よく考えたら自分が若いときもそうだったんですよね。僕らは昔、自分たちができなかったときのことを忘れているのです。
「子どもの認知能力には限界がある」という前提を常に忘れてはいけません。子どもに教えるときはそこに配慮しなければいけません。
その配慮のひとつは
- 速度を落とす
- 板書をする
といったことです。おそらく学校の先生は当たり前のようにやっていることでしょうが、学校の先生じゃなくても子どもと関わる人は覚えておくといいでしょう。
で、ここからがおもしろいのですが、子どもと関わる大人がもっとも考えなければいけないことは
- 適度な難易度の課題を用意できるか
ということでしょう。子どもに関わらず、人間は好奇心はちゃんと持っているのですが、簡単すぎたり、難しすぎたりする課題には興味を示さないのです。ちょっと考えれば解けるかもしれない課題を与えられると、好奇心が発火し、その課題に取り組むことができるんですよ。
よく考えたら、SNSで謎解きの投稿が流れてくると、とりあえず解こうとしますよね。人間のやる気や好奇心は「解けるかも」という適度な難易度の課題が超重要ってことを実感します。
子ども相手の目線で話していますが、これ自分の成長にも使えますからね。イマイチやる気が出ないときって、課題が簡単すぎるか、難しすぎるかって考えると、ちょっと頑張ればできそうな課題にレベルを調整したりできますよね。
「適度な難易度」というキーワードを覚えておきましょう。
基礎知識を学ぶ
「ゆとり教育」という教育方針が日本中で実施されていた時期があります。僕もゆとり教育初期の学生でした。
ゆとり教育の方針をざっくり言うと
- 思考力(論理的思考や批判的思考)を重視する
なのですが、これを
- 思考力(論理的思考や批判的思考)を重視するから、知識の詰め込みはやめる
と現場の先生たちは勘違いをしてしまい、そのような授業が行われてきました。
この方針は聞こえがいいため、当時はそれが正しいという風潮でしたが、人間の脳が学習していく仕組みを考えると残念ながら間違いだったと言わざるを得ません。実は、考え、分析し、批判的に考える能力は幅広い知識が必要不可欠なのです。
【教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則】にはその理由がたくさん書かれているので読んで欲しいのですが、ひとつだけお伝えすると、人間は論理的思考をしているとき、ほとんどの時間記憶を取り出すことに集中している、と言われています。
ようするに考えることは知識と密接に結びついていて、知識がないと深い思考なんてできないのです。
「お金持ちがさらにお金持ちになる」という現象と同じで、知識がある人がどんどん賢くなってくるということなのです。
問いを明確にする
アニメやマンガの内容って一度見ただけでも覚えているのに、学校の授業の内容は覚えてないということは誰もが経験しているはず。これは「ストーリーの力」と言われています。ざっくり言うとストーリーは覚えやすいのです。
じゃあ授業でもストーリーの力を使えばいいと思うのですが、どうやって使えばいいのでしょうか?
それを知るためにはまず、ストーリーの構成を知る必要があります。世の中のストーリーはだいたい次のような構成になっています。
- 因果関係
- 衝突
- 障害
- 登場人物
ハリウッド映画を例に見てみると、100分中最初の20分は登場人物やその因果関係がわかるようには内容になっていて、20分から「衝突」が起こります。ようするに何かトラブルが起こるわけですね。
それを解決しようとするために登場人物が行動するのですが、それを邪魔する「障害」が登場します。その障害をクリアしながらトラブルを解決する。それでストーリーが終了します。
ストーリーの構成要素の中で大事なのは「衝突」で、これを授業に使えばいいのです。「なぜこの課題をクリアしなければならないのか」ということを子どもたちが認識すれば、自然と解決の方法を探るのです。
たいていの授業はその衝突=問いを明確にすることに時間をかけません。子どもたちはなぜその課題を解かなければいけないのかということを分かってない状態で解かなければいけませんから、そりゃあ覚えてませんよね。
「問いが明確じゃないけど答えを求めなくてはいけない」、こうやって文章で書いてみるとかなりの拷問ですよね。でも授業のほとんどはそうなってるんですよね。
分散学習をする
一夜漬けでテスト勉強したことあると思いますが、短期的に詰め込んだ知識ってすぐに忘れてしまいますよね。くり返し何度も使わないと、知識は長期記憶に入っていかないからです。
例えばあるテーマについて2時間勉強しないといけない場合、1日2時間やってしまうか、30分×4日でするのかを選べるのであれば、僕は30分×4日を選びます。
これを「分散学習」と言うのですが、分散学習は学習を効率的にできることで知られています。
分散学習の何が良いって、総勉強時間は少なくて済むんですよ。例えば簿記の3級を合格するためには50〜100時間勉強が必要と言われています。
連続で100時間はさすがに無理なので、可能な限りつめて勉強すると100時間かかるとします。これを1日30分だけしか勉強せず、たくさん分散させてやるとおそらく100時間もかからずに合格基準に達することができます。
僕はなまけものなので、分散学習は積極的に取り入れています。
一緒に成長できる仲間を見つける
成長するにはフィードバックが必要なのですが、そのフィードバックを有効に活用するためには仲間とバディを組むことが重要だと書かれています。バディを組んでお互いにフィードバックを与えあうのです。
僕の場合、目標に向かって行動しているときに仲間がいないので、仲間が近くにいる人はうらやましいなと感じています。お互いが自分の目標を語りあい、励ましあう姿を想像するだけでテンションがあがります。
モチベーションが同じくらいのバディを見つけることができたら幸せですね。
まとめ
【教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則】は、脳科学や認知科学の観点から、子どもたちに勉強を教えるということを詳しく解説してくれています。
学習するということの根本がわかるので、自分が勉強するときにも役に立つし、人に教えるときにも役に立ちます。一家に一冊置いてあってもいい本です。