エドガー・H・シャイン【謙虚なコンサルティング】要約レビュー

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  • 友達に相談されたとき,自分の考えを一方的に話してしまう
  • どうすれば友達の問題を解決できるのかがわからない
  • でも友達の役には立ちたい

人から相談されて,嬉しくなり,ついつい自分がしゃべりすぎてしまうことって誰にでもありますよね。

僕も人に教える仕事をしているため,どうしても一方的に伝えることが多いのですが,それでは相談者の本質的な成長には繋がらないと感じています。

誰かに相談されたとき,どうすれば本当に意味で相手の役に立つことができるのでしょうか。

そんな疑問に答えてくれるのが,エドガー・H・シャイン著「謙虚なコンサルティング」です。

この本によると,相手を本当に助けるためには相手が答えを導き出す「問い方と聴き方」が必要,とのことです。

内容は企業のコンサルタントの事例が多いのですが,親子関係,友人関係,師弟関係などでも参考になる内容です。

この記事では,本書を要約し,気になったところをレビューします。

「相談者が気づく」ための支援をすることに徹底する

この本が一貫して貫いていることは「コンサルタント(支援する側)が考える解決策で上手くいくことはほとんどない」ということです。

コンサルタントって言えば,会社の悪いところをバシバシ指摘し,メスを入れるように良くしてくものだと思っていました。

ドラえもんみたいに「こういう状況にはこう」とアイテムをたくさん持ってるのだろうというイメージ。

でもシャイン先生に言わせればそれは違うみたいです。

もちろんコンサルタントは専門的な知識は絶対に必要です。

専門的なことを聴かれたらしっかりと答えられるだけのものは必要でしょう。

ただなんというか,コンサルタントが有能でもダメなんですよね。

漫画「呪術廻戦」の五条悟のセリフで以下のようなものがあります。

「でも俺だけ強くても駄目らしいよ。俺が救えるのは他人に救われる準備があるやつだけだ」

芥見下々.「呪術廻戦 9巻」.集英社.2020年.P161

まさにこれなのかと。

学校教育に慣れすぎてしまっている我々は,物事には教える側と教わる側が存在するという価値観がとても強く刷り込まれています。

それは実は相談する側が相談を受ける側に「依存」しているという構造でもあります。

もちろんそれでも上手くいくときはあるでしょう。

それは問題がシンプルな場合です。

しかし世の中の問題というのは,そんなシンプルなことばかりではありません。

いろんな要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。

そのような問題に効く万能薬みたいなものはありません。

それよりも相談者本人が問題の複雑さに気づき,最初に何をするべきかを自分で思いつくように支援することが大事です。

そしてそのために相談をする側と相談を受ける側が一緒になって考えていく必要があると書かれています。

偽りなく率直に話せる関係を作る

この本では,コンサルタントは相談者と「偽りなく率直に話せる関係を作るべきだ」と書かれています。

これも最初読んだときは意外でした。

誰かとあまり親密になりすぎると,視野が狭くなり,適切な支援なんてできないと思っています。

だからある一定の距離を置きつつ,相談に乗るのが良いといつも思っていました。

一定の距離を置く関係のことを本書では「レベル1の関係」と定義し,本当に人を助けるためには「レベル2の関係」が必要で,それが「偽りなく率直に話せる関係」なんだとか。

これはなぜかと言うと,レベル1の関係だと,相談者はすべてを話してくれない可能性が高いからです。

コンサルタントがあくまで「支援」に徹するためには,相談者の本音を聞き出さなければいけません。

相手がどう行動すれば良いのかを気づかせるためには,どうしても表面的な相談だけではバッチリな支援はできないのです。

そしてそのためには「打ち解ける」必要があると言います。

これを「パーソナライゼーション」と言います。

打ち解けるための具体的なテクニックも書かれていますが,その中の1つ「チェックイン」というテクニックが印象に残りました。

これは簡単に言うと「自己紹介」みたいなものです。

例えば何かの目的のもと集まったグループが集まって,1人ずつ名前と「なぜこのグループに申し込んだのか」を話していきます。

簡単なことなのですが,これをするのとしないとでは,仕事場の雰囲気や生産性は圧倒的に違うそうです。

ちょっとした自己開示なのですが,それをすることによりパーソナライゼーションが促進されるようです。

これは簡単なので僕も使ってみようと思います。

よく考えたら今までやったことなかったんですよね…

大事なのは分析でも気づきでもなく「行動」である

具体的にシャイン先生がやってる支援は,おおがかりな分析や調査でもなく,問題にピンポイントに効くアイテムを提供するということでもありません。

やっているのは「小さな行動」がメインということです。

企業が抱えている問題は複雑にからみあっている問題です。

どんなに知識や経験があってもあらゆる不測な事態に対応することはできません。

そんな複雑な問題を分析しても時間の無駄というのがシャイン先生の考え。

それなら確実に取り組めて有意義な結果をもたらす小さな変化を起こす行動をしようという主張です。

どうしても人間は「大きな変化」に期待してしまいます。

でもそれが大きすぎて行動できなければ意味がありません。

問題に気づいても,それを解決するための行動を思いついて実践しないと役に立ちません。

真っ暗闇の森の中を歩いていたいると,遠く先の目的地は見えません。

でも自分の周りの1歩分は見えるわけです。

じゃあその最初の1歩をとにかくやろうということなんですね。

この考えは本当に僕が大好きな考えです。

先のことを考えると途方に暮れますが,まずは目の前のことに取りかかることで人生は確実に良くなっているんですよね。

たぶんどんなに成功している人って,この小さな1歩を積み重ねていく勇気があった人だと思うんですよね。

遠くばかり見ていて吠えているだけでなく,目の前のことに真摯に取り組む。

あらためてこのことを胸に刻みたいと思います。

まとめ

例えば友達に相談されたら以下のようにすれば良いのではないでしょうか。

  • とにかく話を聴き,自分の考えはあまりしゃべらない
  • わからないことがあれば,正直に,率直に質問する
  • 友達ができそうな「最初の1歩」を一緒に考える

どうしても自分が話してあげることを理想とするような価値観が根付いているので,かなり難しいことかもしれません。

それでもこの本を読んで,少しずつ実践していくと,本当にあなたを頼りにしている人を助けることができるようになるかもしれません。

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