「注意経済=アテンション・エコノミー」の世の中を生きている私たちは,常に何かに注意力を奪われており,その結果,常に時間に追われている感覚を味わっています。
スマホを見れば常に新しい情報が入ってきますが,そのほとんどは後から思い出すこともできない情報ばかりです。
そのような過負荷な状態で生きている状態では,息苦しさを感じるのは当然でしょう。
息苦しい状態から抜け出すにはどうすればいいのでしょうか?
そんな疑問に答えてくれるのが,ジュリエット・ファント著【WHITE SPACE ホワイトスペース】です。
【WHITE SPACE ホワイトスペース】によると,意識的に「何もしない時間」を作ることにより息苦しさを感じることが減り,もっと人生を楽しむことができるようになると言います。
この記事では【WHITE SPACE ホワイトスペース】を要約し,気になったところを解説していきたいと思います。
どれだけ忙しく働いても人生は好転しない
「どれだけ忙しく働いても人生は好転しない」という文章が書かれてあり,ドキッとしました。
僕も寝ずに働きまくってた時期があります。
「たくさんの情報を処理する」や「頼まれたことはすべてこなす」みたいな「隙間時間がない状態」はやってる時期は他に考えることがないので充実している気になってました。
でも振り返ってみると,深く考える時間がなかったからか,ものすごく非効率なことをやってましたね。
その隙間時間のことを【WHITE SPACE ホワイトスペース】の中では「ホワイトスペース」と呼んでいます。
ホワイトスペースを意識的に作ることにより試行・内省・休息・想像などを促し,逆に仕事がはかどり,プライベートも充実してくると主張しています。
とにかく過負荷な時代ですから,ちょっとでも休むと周りに置いていかれるかもしれないというプレッシャーからか,なかなか休むってできないですよね。
そこで勇気を持って「戦略的に休む」ということをしていると,本当に上手く人生が回っていくから不思議です。
今はかなり仕事をおさえて,旅行や余暇を楽しむように意識しているのですが,たしかに働きすぎていた昔よりも今のほうが楽しいし,上手くいっています。
戦略的小休止を積極的にとる
「のどが渇いてから水分補給をするようでは遅い。のどが渇く前にこまめに水を飲みましょう」というアドバイスを聞いたことがあると思います。
これと同じで「疲れたら休む」だと遅いのです。
疲れる前に意識的に小休止をとり,ホワイトスペースを作っていこうというのが【WHITE SPACE ホワイトスペース】の主張です。
その小休止のことを「戦略的小休止」と呼んでいます。
戦略的に休むってことですね。
実際に小休止をはさむと仕事のパフォーマンスや創造性も高まります。
成功した人の多くが戦略的小休止をとっていて,その時間を考えにふける時間につかっているようです。
具体的にどうすればいいのかというのはそこまで難しくなく,勉強の合間にたまに立ち上がりストレッチをするくらいのことでもOKです。
僕は仕事の合間に外に出て軽く散歩したりしますね。
あと心がけているのは,自分がなんか焦っているなと感じたら,作業をとめ「深呼吸する」ようにしています。
この程度の小休止でも明らかにミスが減ったので驚きです。
情報過多を避ける
SNS,とくにショート動画とか観てると短い時間で大量の情報が入ってきます。
でもあとから思い返してみて「何か印象や記憶に残ってるショート動画あるかな?」って考えてみると,1つもないですよね。
本当に無駄な時間です。
そもそも人間の脳は限られた量の情報しか取りこめないようになっています。
呪術廻戦というマンガに「無量空処」という技があります。
無量空処は相手の脳にたくさんの情報を送り,動けなくするという技です。
これと同じでリアルな人間も大量の情報があったら「何をすればいいのかわからない」という状態になります。
そんな状態におちいると,自分にとって本当に大事なことにも手を付けられなくなります。
【minimalism 30歳からはじめるミニマル・ライフ】にも書いてありましたが,現代人に必要なことは,自分にとって本当に必要なことを見極め,それ以外のことを削る勇気を持つことです。
「あれもこれもやりたい」と考えていると,結局あれもこれも考えることはできず,そして時間も無駄に使うことになっています。
そうではなく自分がやるべきことにだけ集中していると,自分のレベルも上がっていき,それでいて時間もあまるようになっていきます。
そのホワイトスペースがますます自分のやるべきことに集中させてくれます。
僕も情報の取得先を意図的に減らして厳選するようになってから,不思議と「身軽感」を感じるようになりました。
シンプル化する
昔から漫然とやっている仕事もちょっと意識して見ると,けっこう無駄なことがあるかもしれません。
そんな仕事は思い切ってやめてしまうか,工程をもっとシンプルにできないかと考えてみることを【WHITE SPACE ホワイトスペース】では推奨しています。
僕も個人で仕事をしているのですが,スタッフにある仕事を頼んでいたときのことを思い出します。
そのスタッフが辞めることになったとき,その仕事を僕がやらなくてはいけなくなりました。
自分の仕事で手いっぱいだった僕はその仕事を放置していました。
興味深いのは,しばらく放置していても僕の仕事に何も悪い影響はなかったということです。
このように実は意味がない仕事をやっていることってけっこうあります。
ちょっと立ち止まって考えてみると,そういう仕事がいくつかリストアップできるかもしれません。
それを1つずつやめてみるのはどうでしょうか。
その分時間が生まれ,余裕ができ,本当に必要なことに注力することができます。
本当に緊急なものを見極める
仕事にはトラブルがつきものです。
そして,そのトラブルが起きた事案を最優先に対応してしまうのもわかります。
でも「その緊急性は本当?」と少し立ち止まって考えてみると,意外とそうでもない場合ももあります。
【WHITE SPACE ホワイトスペース】では緊急性について3つのカテゴリーに分けて考えています。
- 緊急性がない:ただちに応じる必要はない
- 戦略的な緊急性がある:迅速な対応が成果に直結する
- 感情的な緊急性がある:焦りや好奇心やストレスから緊急性を感じている
この中で気をつけなければいけないのは3番です。
トラブルが起きて「これはまずい」と感じると,焦りが生じ,それに対応してもそこまで効果がないことでも最優先に対応してしまいます。
頭の中はトラブルのことでいっぱいです。
ここで戦略的小休止をとり,落ち着く必要があります。
人間は反射的に反応するほど,考えずに行動しなくなります。
それに対応するためには,戦略的小休止をとり,考える時間をとるべきです。
チームを改革したいときはまず自分から始める
ホワイトスペースの考え方を自分が所属している組織やチームで使いたいと考えたとき,いきなり部下とかに「明日からやってみよう」と話しても上手くいきません。
そうではなく,まずは自分が始め,周りが自然に気づくほど成果を出す必要があります。
これは僕も失敗していたのですが,どうしても知識が手に入ると試したくなるし,共有したくなるんですよね。
で同僚や部下に話してみても,いまいちピンときてないし,その知識を実行することはありません。
人間は自由を好む生き物なので,一方的に押し付けられた知識は,どんなに正しくても不要なものでしかないのです。
それならまずは自分で使いこなすことから始め,その知識をマスターするべきだと書かれています。
これには耳が痛かったですが,これは実践したいと思います。
まとめ
日本だと特にそうかもしれませんが「休憩することは悪だ」みたいな風潮ありますよね。
昼寝をすることで仕事のパフォーマンスが上がることや週休3日制にすると仕事の成果が上がることは研究で明らかになってきています。
しかし,それらを取り入れている企業は数えるほどです。
組織に期待せず,まずは自分がホワイトスペースを取り入れる行動をしてみてください。
少しだけ取り入れても,大きな余裕を感じることができると思います。