立石泰則【フェリカの真実】要約レビュー

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  • 自分でビジネスをやっているけど,あまり上手くいっていない。
  • 勉強したいけど,ビジネス書はピンとこない。
  • 具体的な企業のケーススタディとかで勉強したい。

ビジネス書はたくさん読むのですが,いろんな企業の成功例と失敗例をさらっと触れられるだけのパターンが多く,1つの企業を深く見るという経験は多くの人が少ないのではないでしょうか。

今回紹介するのは,立石泰則著【フェリカの真実】です。

ソニーの技術者の日下部さんという方が現在の電子マネーの基盤となったフェリカを開発しました。

日下部さんはフェリカの無限の可能性をソニーの上層部に必死にプレゼンしたのですが,上層部はその可能性を理解できなかったそうです。

【フェリカの真実】は,ソニーという大企業だからこそ患う大企業病はどういうふうに起こるのか,本当に先見の明がある人というのはどういう人なのかということが詳しく勉強できる本です。

この記事では【フェリカの真実】を要約し,気になったところを解説していきます。

本を読んで得た知識を僕なりにかみ砕いたり,すでに持っている知識と混ぜたりしているので,必ずしも本書と同じ内容ではない場合もあります。

物販ビジネスには手を出さない

モノを売るというビジネスはリスクと限界があります。

例えばフェリカの電子マネーカードを1枚300円で売ったして,もし国民全員に行き届いてしまったらそれ以上の収益は望めません。

1人の人に買ってもらったとして,そのカードを紛失するか,故障するかしないと新しいカードを買ってもらえないわけですから。

これが物販ビジネスの限界なわけです。

物販で小銭を稼いで,それを元手に新しいビジネスをしようというなら話は別ですが,物販で永久に稼ごうと思ったら無理があります。

日下部さんは「コンテンツはライツ(権利)を売るべき」と1996年から主張してきたそうです。

分かりやすく言えば,今の音楽のサブスク。

CDを売るわけでもデータを売るわけでもなく,聴く権利をサブスクで売っているわけです。

これなら売り切りではなく,定期的に収入が発生し,事業は長く続きます。

この研究を1996年からやってきたそうで,先見の明がありすぎですよね。

ソニーは1度,JR東日本と組むことでフェリカを売り切りではなく定期収入が入ってくるビジネスモデルにする可能性があったのですが,ソニーがそれを蹴りました。

日下部さんたちの考えを上層部は理解できなかったんですね。

手段をビジネスにしない

ソニーが開発した電子マネーはエディ(Edy)ですが,これはもともと音楽配信サービスの決済手段としてリリースされる予定でした。

ただSMEが音楽配信に消極的だったらしく,話が進みませんでした。

そこでソニーは音楽配信サービスではなく,その決済手段としての電子マネーをビジネスにできないかを模索し始めました

そこで生まれたのがエディなのですが,ご存知のとおり,これも上手くいきませんでしたよね。

現在では楽天がエディを買収していますが,ソニーは増資をし続けることでしかエディを維持できなくなっていたのです。

「輸血を続けていかないと命を維持できない」と表現されており,手段をビジネスにしてしまうとこういうことが起きるという1つの例でした。

囲い込みをしない

ビジネスにおいて,顧客を囲い込むことは定石とされていますよね。

当然自分たちのコンテンツを選んで欲しいわけで,そのためにポイントカードだったり,互換性をなくしたりして,以下に他のサービスを使わないようにして,自分のサービスを使ってもらうかを考えるわけです。

実際、現在存在している電子マネーは互換性がほぼありません。

店によっては使えたり使えなかったりと,我々ユーザーからすればものすごく不便です。

多くの電子マネーはフェリカがベースなので,簡単に相互利用できるはずなのですが,です。

ここで英断をしたのはJR東日本の「スイカ(Suica)」です。

スイカはJR東日本の切符としても利用できますし,駅構内のコンビニなんかでも使うことができます。

またその他の鉄道系の企業だったり,バスの企業だったりにも呼びかけて相互利用できるようにしています

交通に関しては、スイカとかパスモとか,どれかを利用していればだいたいどの交通インフラも利用できますよね。

ユーザーとしてはものすごく便利です。

その結果,スイカとかその他の鉄道系電子マネーは続いてますよね。

市場自体を活性化させる方法を考える

ソニーのようなモノづくり企業は,全力でよい製品を作り,売ります。

これは素晴らしいことなのですが,よい製品を作れば作るほど,高額商品を作れば作るほど,買い替えのサイクルが長くなり,新しい製品は売れにくくなります。

これはモノづくりの宿命だと思うのですが,日下部さんはこの対策として「市場自体を活性化させ,市場価格を安定化させることが大切」と主張しています。

例えば自動車メーカーのトヨタは,新車を購入するお客さんに対し,中古車の下取りを自社で行っています。

その中古車をメンテナンスなどをして,自社で管理して市場に出すことで市場での中古価格を安定させているのです。

日下部さんはこれをソニーでもするべきだと主張していましたが,これも上層部には理解されなかったそうです。

まとめ

フェリカの真実】はソニーとかJR東日本のケーススタディを勉強することができます。

みんなが知るような大企業でも,先見の明のなさで失速したり,逆にユーザーのことを徹底的に考えて成功しているなど,具体例を知ることができるのはとても勉強になりました。

僕も自分でビジネスをやっているので,ソニーがやってしまった失敗も気持ちがよくわかります。

でも自分たちの利益以上にユーザーの利益を考えたほうが長く続いているということがわかれば,少しずつでもユーザーの利益を考えた行動をしていく必要があると考えさせられました。

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