「他人を変えることはできない」とよく言われますが,それでも何とかしなければいけないことってありますよね。
自分の人生経験をもとにあれやこれや説得したりするでしょうが,その労力が徒労に終わることもしばしば。
自分たちの言うことを聞いたほうが絶対にメリットがあるのに,なぜ人は合理的に物事を考えることができないのでしょうか。
今回紹介するのは,ロレン・ノードグレン,デイヴィッド・ションタル著【「変化を嫌う人」を動かす】です。
【「変化を嫌う人」を動かす】によると「人間はメリットよりもデメリットに目を向ける性質があり,そのデメリットが解消することで変化を嫌う人を動かすことができる」と書かれています。
実際に僕も「これやったほうがいいんだろうけどめんどくさいな」と思うことが多々あります。
これをメタ的に見ることで,自分のサービスを利用してくれない人たちの気持ちがわかり,もっと自分のサービスをブラッシュアップすることができるかもしれません。
この記事では【「変化を嫌う人」を動かす】を要約し,気になったところを解説していきます。
魅力的なオファーだけでなく抵抗をなくす
【「変化を嫌う人」を動かす】を主な主張は「魅力的なオファーだけでなく抵抗をなくす」ということです。
例えばVODサービス。
ネットフリックスのようなVODサービスは多くの方がご存知だと思いますが,サービスをどのようにアピールしているでしょうか。
- 月額○円で見放題
- たくさんの作品が見放題
- 初月無料
- スマホでも視聴できる
みたいな感じでしょうか。
ほとんどのサービスが,自分たちのサービスの「ベネフィット」や「メリット」を必死に伝えます。
もちろんこれは必要なことです。
ですが,同時に考えるべきなのは,ユーザーがそのサービスに申し込まない理由です。
- 初月無料だけど,どのタイミングで課金されるんだろう。
- 解約忘れてて勝手に課金されてたらどうしよう。
- クレジットカード持ってないな。
- クレジットカードで登録するの不安だし,面倒だな。
- スマホのギガどれくらい使うのかな。
などなど。
これらの不安や疑問が「抵抗」となり,いくら魅力的なサービスでも成約まで至らないというケースがたくさんあるのです。
【「変化を嫌う人」を動かす】の中には,どのような抵抗があり,その抵抗を解消するためにはどのような方法があるのかが多くの事例を元に書かれています。
ひな形をつくる
入院中の子どもたちを応援する手紙を書いてもらおうと働きかけるとき,以下のような選択肢があるとします。
- 手紙がどれだけ子どもたちのためになるかを説明する。
- 手紙を書いてくれた人に謝礼を払う。
- ひな形をいくつか提案した。
この中で1番と2番は逆効果になり,3番は応じてくれる人が60%も上昇したと言います。
この働きかけに応じない理由は,おそらく重要性を感じていないとか,そんなことをしても意味がないと思っていたとか,そういうわけではなく,ただ単に「何を書けばいいのかわからなかった」からだということなのです。
これを応用すると,例えば募金を促す場合,募金の素晴らしさとか送り先がどれだけ苦しいのかを語るよりも,募金をする具体的な方法とか,他の人は何円募金してるのか,などの単純な情報が必要だということですね。
これはけっこう盲点ですよね。
そして自分のビジネスにも簡単に導入できそうです。
ロードマップをつくる
さきほどの「ひな形」の例と似ていますが「ロードマップ」を作ることも効果的だと書かれています。
例えば,会社の部下が積極的に働いてくれないという社長がいたとします。
この社長はもしかしたら必死に仕事について部下に語るかもしれませんが,おそらく逆効果ですよね。
積極的に働いてくれない部下は,もしかしたら本当にやる気がないのかもしれませんが,まず考えるべきなのは「茫漠感=どうすればいいのかわからない」についてでしょう。
部下が無関心に見えるのは,茫漠感の表れの可能性が高いのです。
ここで社長がするべきなのは「ロードマップ」の作成です。
部下にもっとやって欲しい行動と実際に行われるべきタイミングを,1日,1週間,1ヶ月の中のいつなのかを書き出してみて,ロードマップとして作成するのです。
これは子どもの教育にも使えると思います。
例えば,我が子が「あいさつができない」としたら,普通の親はあいさつができるようにいろいろ話すかもしれません。
それよりも「いつあいさつをすればいいのか」を教えてあげるのです。
「先生に会ったらあいさつをする」とか「帰宅したらただいまという」など具体的なシーンを教えてあげるといいだけなのです。
このロードマップの作成は社長や親がメタ認知ができていないと作成できません。
ロードマップを作る際に「言語化」を強いられます。
いろいろと考えるきっかけにもなるでしょうね。
自己説得を使う
「部下にもっと積極的に仕事をして欲しい」とか「あいさつができる子になって欲しい」など,上の立場の人間は,下の立場の人間に変化を強制してしまいがち。
当然,変化の強制はうまくいかないことがほとんどです。
なので「自己説得」というテクニックを使いましょう。
自己説得とは,自分自身を説得できるようになることで,上の立場の人間ができることはそれを手助けをすることです。
ただ気をつけることは,自己説得は,相手の好きにすればいいということではなく,あくまでこちら側の意図に気づかせることが必要です。
具体的な手法もいくつか書いてありましたが,簡単そうなのは「指示するのではなく質問する」という方法と「目標を自分たちで書かせる」という方法でしょうか。
部下や子どもにコミットメントしてもらうことが重要で,コミットメントに上手い具合に誘導する必要があるのです。
なかなか難しいかもしれませんが,「北風と太陽」の北風のように無理やりコートを脱がせようとする行為は意味がないということは肝に銘じておかなければいけませんね。
まとめ
【「変化を嫌う人」を動かす】には,たくさんの事例が書かれており,具体的に学ぶことができます。
「なんで気づかなかったんだろう」と思うことも多々あり,自分たちでいくら考えても思いつかないことを知ることができれば,自分たちのサービスを改善することができるかもしれません。
「周りの人たちがよい方向に変わってくれない」と嘆いている人にも役立つ情報が書いてありますので,オススメです。