新しい環境に入ることは誰にとっても緊張するものですし、それが何かの習い事とかであればなおさらでしょう。
何せ自分は初心者で、周りは昔からいる人たちなので、自分だけスキルがなく「できない人」なわけです。
緊張と恥ずかしさという2つのネガティブな感情に耐えることができる人は、なかなかいないのかもしれません。
ですが、そんなストレスを乗り越えることができれば、それからは長期的に素晴らしい経験になることは間違いありません。
今回紹介するのは、トム・ヴァンダービルト著【初心にかえる入門書】です。
【初心にかえる入門書】には、著者であるヴァンダービルトさんが新しくいろいろなことを始めて習熟していく経験と科学的根拠をもとに、初心者時代の乗り越え方が書かれています。
ヴァンダービルトさんは現時点で55歳なので、初心者、かつ、若くないというハンデを乗り越えつつ、様々なスキルを身につけていきます。
そんな様子を見ていると、ヴァンダービルトさんよりも若い僕たちは絶対にできるのではないかと勇気づけられます。
この記事では【初心にかえる入門書】を要約し、気になったところを解説していきます。
意図的な練習をする
例えばチェスで上達するためには、どのような練習方法がいいと思いますか?
前者は、著者であるヴァンダービルトさんがとった戦略で、後者は娘さんがとった戦略です。
後者の戦略は、【超一流になるのは才能か努力か?】という素晴らしい本の著者、アンダース・エリクソンさんが言う「意図的な練習」というやつです。
どうやらあらゆるスキルを伸ばすには、意図的な練習が必要なようで、あまり頭を使わずに量をこなしていてもそこまで上達しないらしいんですね。
意図的な練習については詳しく触れませんが、ようするに「質が高い練習を継続していく」ことが大事で、それが積み重なって結局練習量も増えているというのが、トッププレイヤーたちの練習のようです。
「一万時間の法則」というのもありますが、意図的ではない練習を一万時間繰り返してもあんまり上手くならないよということです。
これを知っていると、何か新しいことを始めるときでも初心者の段階で意味がない練習をすることがなくなりますよね。
繰り返さない反復練習をする
スキルを上達させるためには反復練習が必須です。
ですが、その反復練習も多くの人が誤解しているそうです。
例えばバスケのフリースローを練習するとき、多く人はフリースローラインからシュートする練習「だけ」をします。
仮にこのような練習を100回するとしたら、100回とも同じ条件ですよね。
そうすると脳が慣れてくるのですが、その慣れがスキルアップを阻むのだそうです。
理想の反復練習は、まったく同じことを「繰り返さない反復練習」だと言います。
具体的には、フリースローラインからのシュートを30本やったら、次はフリースローラインから一歩後ろの位置からのシュートを30本、その次はフリースローラインから一歩前の位置からのシュートを30本、のように、微妙に条件を変えていくのです。
こうすると、条件を変えるたびに脳が調整を余儀なくされ、それがスキルアップに非常に効果があるのだそうです。
これは意外ですよね。
おそらく多くの人が直感的に「同じことを繰り返したほうが上手くなる」と感じていると思いますが、逆だったんですね。
これを知ってる人はほとんどいないと思うので、ライバルと差がつけられそうです。
若いほうがスキル習得は早いという事実を受け入れる
僕も今41歳ですが、同じくらいの年齢の人だと「今から何か新しいことをするのは無理だよな」と考えている人は多いでしょう。
実際に、平均年齢が20歳のグループと60歳のグループを比較した研究だと、やはり年配のグループのほうがスキル習得は難しいという結果が出ています。
ただこの研究結果は「年寄りは諦めろ」と言いたいのではありません。
能力を維持するためには、より多く行動をしなければいけないということです。
年をとるにつれてどんどん衰えていくのは仕方がないのですが、自分の能力を上げるための行動をしていると、衰えるスピードは確実に緩やかになっていきます。
また年配の方でも学べば学ぶほど学習速度は速くなることも確認されているそうです。
僕は幸い、学ぶことが好きなので41歳になっても練習したりすることは苦ではありませんが、「もう遅すぎる」と諦めないでほしいですね。
スキルを習得する過程に着目する
例えばSNSですごいダンスが上手い人の動画が流れてきて練習しようと思い立ったとします。
でも何度練習しても同じように動けない→自分には才能やセンスがないんだな→やーめた、というケースって絶対に多いと思うんですよ。
【初心にかえる入門書】ではこれを「ひっかかりのない時代に生きているから」と上手い表現をされています。
ようするに、SNSにアップされている上手いダンスだけを見るということは「結果だけを見ている」ということになり、そこに至るまでの過程が創造できてないんですよね。
SNSにアップした人だって、裏ではものすごい練習をしているはず。
でも見ている側からすれば、その苦労は創造できず、自分にもできるはずだと思い、諦めるという「理想と現実のギャップ」がえぐい時代だと思うんですよね。
この理想と現実のギャップは、初心者にとってはとくにネガティブなものになります。
だから新しく何かを始める際には、いきなりかけはなれたゴールを目標にするよりは、日々の小さな成果を褒めてやるくらいのほうがいいのだと思います。
自分の得意分野に引きこもらないようにする
【初心にかえる入門書】では、科学者とエンジニアとの考え方が対比してありました。
例えば、医者が手術をする場合、ミスをしてはいけないので、エンジニアマインドが必要となります。
命がかかった手術中に「この方法試してみよー」みたいなことをされたら困ります。
ですが、スキルを習得する場合、エンジニアマインドだけしかなければ成長しないわけです。
ミスを恐れず、自分がわかっていない領域に飛び込んでいく科学者マインドが必要になるというわけです。
僕も自分がやっていることの練習をする場合、どうしても得意なことばっかりをやってしまいます。
苦手に向き合うとストレスがかかり楽しくないからです。
でもあるとき「それじゃあ上達しないよなー」と思い、少しずつ苦手と向き合っていくと、やはり少しずつ上達を感じられるようになりました。
自分の苦手と向き合うのはけっこう難しいことですが、少しずつ恐怖と向き合っていくと長期的にメリットになるでしょう。
まとめ
【初心にかえる入門書】には、著者であるヴァンダービルトさんが新しくいろいろなことを始めて習熟していく経験と科学的根拠をもとに、初心者時代の乗り越え方が書かれています。
新しいことに挑戦するということと、恥ずかしさに耐えるというのは、人間としては避けたいことではありますが、そこを乗り越えると今までよりも価値がある人生を歩むことができます。
乗り越えたいという方には【初心にかえる入門書】はとても参考になると思います。
素晴らしい本でした。