今は「VUCA」の時代だと言われています。
VUCAとは変動制(Volatility),曖昧性(Ambiguity),不確実性(Uncertainty),複雑性(Complexity)の頭文字です。
要するに「先の予測がつきにくい世の中」ということなのですが,そのため今どのように行動するのが正解なのでしょうか。
「今,何かしなければいけない」と多くの人が考えていますが,何をすればいいのか,何をすればVUCA時代の未来にも役に立つのかがわかる人は多くありません。
そんな難しい疑問に答えてくれるのが,徳岡晃一郎,房広治共著「リスキリング超入門」です。
この本では「4つのSを身に付けるという観点でのリスキリング」を提案してくれています。
4つのSとは以下の通りです。
- スピード感(Speed)
- セキュリティ感度(Security)
- シナリオ思考(Scenario)
- サイエンスマインド(Science)
この4つがVUCAの時代には必要で,かつ,日本人が世界に比べて圧倒的に劣っている能力だと言われています。
この記事ではこの本を要約し,気になったポイントをレビューします。
日本が遅れている4つのS
4つのSを解説すると以下のようなものです。
- スピード感(Speed):目標に向かって,世界標準のスピードを意識して前に進めていく
- セキュリティ感度(Security):自分の立ち位置を明確にし,自分の取り巻く環境の脅威をしっかりと認識した上で,自分の目標を実現していく
- シナリオ思考(Scenario):未来に向けての理念を明確にし,そこから逆算して今を考え,今後の筋道を作り出す
- サイエンスマインド(Science):データや論理的思考をベースに意思決定をする。また失敗してもそこから学びながら目標を実現していく
この4つ,世界に比べて日本ははるかに後れを取っていると書かれています。
1989年の世界企業の時価総額ランキング,トップ10に日本企業が7社も入っていました。
しかし,その30年後の今,トヨタが41位でかろうじて50位以内にランクインしていますが,それだけです。
かつて日本という国は素晴らしい国だったのですが,この30年間で力が失われています。
それはこの4つのSという考えがあまりにも日本に浸透してないからなのでしょう。
ルールは日本では「守るべきもの」として捉えられている
この日本が遅れている理由の1つとして「ルール」に関する言及がありました。
日本にとって,ルールとは「守るべきもの」として捉えられています。
対して欧米ではルールは「作っていくもの」と認識されています。
例えばルンバのようなロボット掃除機,日本でもある大手家電メーカーが開発されようとしていたそうです。
しかし残念ながらその企画は役員会で却下されたそうです。
理由が「掃除機が階段から落ちて下にいる赤ん坊にあたってケガさせたらどうなるか」「仏壇にぶつかって燃えているロウソクが落ちて火が燃え広がったらどうするのか」みたいなことだったそうです。
これは安全第一でリスクを極端に嫌う日本の体質をよく表していますよね。
ルンバはアメリカの企業が作ったものですが,最初から使用できない場所を特定しています。
また技術で対応できない場合は,逆にルールや規制のほうを検討するのです。
その結果,ロボット掃除機の市場というのは今は大きくなっていますよね。
日本がもたついているうちに市場を獲得できなかったという例です。
その他の日本の失敗例
成功例を知ることも大事ですが,個人的には失敗例をたくさん知っているほうが有益だと考えます。
成功の要因は特定できませんが,失敗の要因は特定しやすいですし,自分たちに活かしやすいからです。
この本に書かれている日本の失敗を書いておきます。
- FeliCa:FeliCaを開発したのは日本人の方です。技術としてものすごく優れいているものですが,日本国内での足の引っ張り合いや内輪もめで国際規格になれませんでした。しかしAppleやGoogleはFeliCaの技術に目をつけていて,その結果,iPhoneやandroid端末にはその技術が搭載されています。
- リチウムイオン電池:リチウムイオン電池の開発も日本人の方です。ですが,リチウムイオン電池の力を最大限まで引き出して使っているのはテスラです。結果,テスラはEVのシェアを確立しています。
- 青色発光ダイオード:青色発光ダイオードを発明した中村修二氏。ただ企業はその才能を活かしきれず,他の社員と同じような扱いをしたそうです。
- iPS細胞:iPS細胞に関しても,もっと国がお金の援助をすれば,もっと早く実用化がされていた可能性があります。実際は山中伸弥氏ら自ら金策に走っている状況です。
- iモード:iモードの成功はネットにある無数の情報を絞ってユーザーに見せることにより使いやすいサービスになったことです。そこに目をつけたのはAppleのスティーブ・ジョブズで,iモードのアイデアからiPhoneは生まれたといわれています。これをドコモがもっと視野を広くしていたら,日本だけの成功に留まらなかったかもしれません。
日本の悪いクセ
本書では日本の悪いクセを「3つの過剰」と揶揄しています。
- オーバーアナリシス
- オーバープランニング
- オーバーコンプライアンス
要するに「考えてばかりで何もせず怒られないように」しているということです。
よくPDCAという言葉が使われますが,日本の場合「PdCa」と表現されています。
P(計画)とC(評価)は大文字で,dとa(行動)は小文字で表現されています。
おもしろいですね。
SNSを見ていても思いますが,やたら人を批判してる人が多い印象です。
ただその人たちが何かをしているのかと言われると,まあ何もしていないでしょう。
それなら批判を怖れずに行動し,失敗しても前に進んでいる人たちのほうがいいですよね。
そういう人たちが日本には少ない,それが日本という国全体を成長を妨げているのだと思います。
まとめ
日本が世界に対して後れを取っている「4つS」を見据えて学び直すことで,日本に必要な人材に近づくことができます。
なんでもかんでも学び直せばいいというものではありません。
そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りません。
それなら今の日本に必要になるであろう人材になるためのスキルを学び直すことで,無駄な時間を使うことなく,効率的にスキルアップすることができるのです。
この記事では,具体的にはどんなスキルをつければいいのかは割愛しましたが,本書には4つのSを観点にどういうスキルを身につけていけばいいのかが書かれています。
きちんと学び直ししたい人はぜひ読んでほしいと思います。